続・家づくりの玉手箱 2020.08.31

続・200%エコな日よけ

 

7月に4年ぶりの庭木剪定をして以来、我が家の2階リビングは灼熱化してしまいました。(剪定の様子は オリンピックイヤーの『庭木剪定』 をご覧ください)

 

1ヶ月ほど経ち、丸坊主の枝から一斉に新芽が吹いてきました。 今年の日よけには間に合いませんが、来年の夏にはしっかり日よけとしての戦力になるはずです。

 

↑7月にバッサリ剪定した枝から新芽が出てきました。

 

深い緑に覆われていた2階デッキは一日中炎天下にさらされるようになりましたが、遠くの山や海や打ち上げ花火が再び楽しめるようになりました。

 

↑ずっと葉っぱで見えなくなっていた錦江湾と開聞岳(922メートル)がきれいに見えます

 

一般的には庭木では避けることも多いのですが、自宅では成長の早いクスやシマトネリコを果敢に植えました。剪定は大変ですが、剪定後の葉陰の復活はすこぶる早いのです。これらの木は常緑樹ですが、夏は枝をどんどん伸ばして日射の調節をしてもらい、冬になる前にバッサリ切って冬の貴重な日差しを目一杯取り入れるようにしていました。

 

剪定後の灼熱化は初めてのことではなく予め覚悟はしていましたが、今年は特に暑い日が多く厳しい毎日でした。大きく繁った庭木の葉っぱがいかに日よけの役目を果たしていたか、改めて実感することになりました。

 

朝起きて、屋根裏から東側の4つの窓を見ながらトイレに降りて行くのですが、剪定前はすべての窓に葉陰が落ちていてそこまで暑さを感じることはありませんでした。しかし、剪定後は窓の半分以上は日なたになってしまい、いきなり暑さの洗礼を受けるようになってしまいました。そういえば、庭木の小さい入居直後の夏は朝日をもろに浴びつつ首にタオルで汗をかきながらの朝ごはんだったことを思い出します。

 

↑剪定前の朝の窓(東側)ほぼ窓前面が葉陰になっています

 

↑剪定後の朝の窓(東側)半分以上が日なたになっています

 

ここ数年は2階リビングながらも “木陰” の生活をしていましたので、急に暑くなってしまって建物そのもの、単体の熱性能をあらためて認識することになりました。最近では住宅の熱性能を個別に計算して数値化、それを拠り所に設計をされる技術者も増えてきたようです。自宅を建築した際は一部の既製品の窓の性能データは入手できたものの、家全体の性能を客観的に評価することは難しい環境でしたが、多くのお客様宅での建築事例とその後の生活状況などから「このぐらいの仕様・プランでこのぐらいの生活環境が整う」というある種の “感覚” みたいなものがありました。

 

しかし、使用する部材や仕様を変更すると、そのことがどの程度出来た住まいに影響するものか?は実際に建ってからの検証になってしまっていました。現在では様々な情報とソフトウェアの組み合わせで、より明確に建てる前の設計毎に個別性能シミュレーションが実務として出来るようになったことは大変な進化です。こういったことは耐震性などに大きく影響する構造についても同様ですが、積極的にこの事前の「客観性」を設計に活かしている設計者はまだまだ少数派のようです。

 

こういった住宅の性能評価は通常庭木などはない前提で計算されることがほとんどだと思います。 そういう意味では今のこの暑い状態が我が家の建物としての実力とも言え、せっかくなのでこの丸裸に近いの状態で窓まわりの表面温度を測ってみることにしました。
(8月30日16:00頃 鹿児島市 外気温37°C 室温29°C 窓は木製建具・ペアガラス 西向き)

 

↑↓ まずはガラス戸だけの状態(室内側のガラス表面はなんと41.5°Cに!)

 

 

 

↑↓ ガラス戸+障子(室内側の障子表面温度36.6°C)

 

 

 

↑↓ 雨戸のみ(室内側の雨戸表面温度54.7°C)

 

 

 

↑↓ 雨戸+ガラス戸(室内側のガラス表面温度41.1°C)

 

 

 

↑↓ 雨戸+ガラス戸+障子(室内側の障子表面温度33.5°C)

 

想像を超える結果でした。

 

「今年は暑いな」とは思っていましたが、そりゃ暑いはずです。エアコン効かないはずです💦

 

ガラス戸だけ(41.5°C)と雨戸+ガラス戸(41.1°C)は殆ど同じ温度になっています。 これは、当たった日射が雨戸面で熱に変わっているためだと思われます。 雨戸を閉めていてもガラスの内側の表面温度は殆ど変わらなかったのは意外でしたが、室内への日射は遮られている訳ですから、日射が室内床などに当たって熱を発する部分は大幅に軽減されているはずです。
剪定前に葉っぱが窓いっぱいに繁っていた時は雨戸に陽が当たらなくなっていましたので、おそらくサーモグラフィーの色が全然違っていたことでしょう。 住宅の熱性能を考える際には、熱の出入りを常にトータルで捉えて評価する必要があるということですね。

 

人が室内で暑いとか寒いと感じる要素は、単に室温・湿度(%で表される相対湿度)だけでは十分説明できないということが一般的に論じられるようになってきました。熱の伝わり方には伝導・対流・放射というバリエーションがあって、まわりの物体(室内の場合は床・壁・天井など)からの影響(放射)がなかなかとらえにくい要素であったと思います。

 

最近では住宅の熱的境界になる外壁・床・天井・屋根・窓・ドアなどを指して外皮と呼ばれますが、この “外皮” の夏の室内側の表面温度の一部を今回測ってみたことになります。 室内床・壁・天井面の表面温度が人の体で感じる体感温度に大きく影響することは感覚的には理解していましたが、実際の温度を見ると驚愕してしまいました。窓の大きな家に住んでいますので、これは無視できません。影響大です。

 

住宅の断熱・気密と熱性能について、難しそうな概念を幅広く且つ分かりやすくまとめられた入門書が発売されました↓これ一冊でかなり勉強になります。ご興味のある方はぜひ。

 

松尾和也 著『エコハウス超入門 84の法則ですぐ分かる』新建新聞社 2020年

 

 

あなたの会社では、”外皮”の性能以前に実際の建物の室内表面温度を測ってみたことはありますか? そのことを次の提案に生かす習慣が根付いていますか?

 

 

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