マンションリノベ しくじり先生 2020.09.14

『ぱっと見』に騙されるな!

 

マンションリノベーション事業立ち上げの際、気付かない事ばかりで ”しくじり” の連続でした。
部屋まるごとのリノベーション工事は、そもそも壊してみなければ分からない部分があること自体ドキドキな訳ですが、初めての現場では壊した時点で早速やらかしてしまいました。

 

安全に解体工事を済ませたいと思い、戸建新築に建て替えの際にお願いしていたM社に見積り依頼をしてみたものの、搬出が手運びで大変だとのことでビックリするぐらい高く、相見積もりを取ることにしました。M社はマンション住戸の解体経験が少なかったようでした。

 

しかし、解体工事にも”品質”があることは新築の仕事を通じてよく分かっていましたので、安ければ良いというものでもなく仕事の質を見極めないといけません。

 

そうした折に別の部屋の解体工事があってE社が来ていましたので、作業をつぶさに観察することにしました。

 

管理人さんや住民の方への挨拶、供用部分の養生、駐車マナー、清掃など数日見ていましたが申し分なく、見積りをお願いすることにしました。社長が現場に来られて下見をしていただく際に先日解体した別の部屋も許可を取って見せてもらいました。
その部屋は丁寧に解体してあり「高くても頼みたい」という気持ちでしたが、出してもらった見積りも思ったより安くE社にお願いすることにしました。

 

かくして、慎重に発注先を決め解体工事が始まりました。現場には先の部屋を解体して勝手の分かっている同じ職長さんに来てもらいました。1日目、2日目と職長さんと要所要所打合せしながら進めてもらい、3日目以降も手慣れたメンバーで順調な様子でした。
5日間で解体工事は完了しました。

 

↑「あー。きれいに解体してくれた」と思いきや…

 

 

 

マンションリノベーションの場合、解体が完了して駆体や配管が初めて見える状態になりますので、再度採寸して計画を微調整します。異変に気づいたのはその採寸作業を行っているときでした。

 

↑サッシ枠が変形、外壁にまでクラックが!

 

やってしまっていました。しかも掟破りの ※ 供用部分。バルコニー側のアルミサッシの枠が変形、外壁にまでクラック(ひび割れ)が走っていました。共用部分の補修には管理組合の許可が必須です。
これからというところでつまずいてしまいましたが、まずは現状復帰を考えないといけません。E社社長とも協議して、とにかくすぐに理事長さんに補修方法と共に報告、了承を得ました。

 

※ 共用部分とは

 

マンション住戸のアルミサッシや外壁は供用部分と呼ばれ、区分所有者全員の共有物とされています。

 

 

アルミサッシとコンクリート駆体は部分的に溶接固定されていて、隙間をモルタルで埋めてありました。その隙間のモルタルが割れてしまってアルミサッシの縦枠を押し曲げている状態でした。補修作業を行うには、まず割れているモルタルを取り除いてからサッシを真っ直ぐに矯正してから再度モルタルを詰め直す必要がありました。幸い外壁のクラックは浅く塗装部分のみでしたが、その部分の補修は最後に行う事にしました。

 

↑お助けマン登場。(削岩機には引きました)

 

↑割れて亀裂ができて膨れてしまったモルタル部分を少しずつ砕いています

 

↑削岩機作業完了。鉄筋とサッシ縦枠の溶接箇所があらわに

 

↑アルミサッシの変形を修正後、新たにモルタルを充填完了

 

 

実は、もう一箇所ひどいことになっていました。

 

こちらもアルミサッシが変形しているのですが、サッシと木製枠材を固定するビス穴がちぎれてその部分がくの字にひん曲がっていました。これを見た時はさすがに絶望的な印象を持ちましたが、特殊技術を持った人がいるもので「直せる」との事で迷う事なくすぐにお願いしました。

 

↑こちらのサッシ枠はネジ穴が引きちぎれ大きく曲がっています

 

↑2人目のお助けマン。美術系の小道具多数。聴いてみたら「絵を描くのが本業ですー」との事でした

 

↑パテのようなもの(企業秘密)で形を修復し、この後ぴったり色合わせした特殊塗装を施します

 

↑まるで新品のように元どおりになりました!

 

どうやら2箇所共サッシ枠に木製枠材が取り付いたまま、無理やり引っ張って取り外したみたいでした。木製枠材をサッシ枠に固定しているビスの山がつぶれていて、ドライバーでは回せなかったのだそうです。

 

 

さらに事情聴取していきますと、いろいろ新事実が明らかになってきます。

 

3日目までは毎朝現場に通っていたのですが、4日目からは別件もあってその日の完了後の確認になっていました。てっきり同じメンバーでやってくれていると勝手に思っていたのですが、4日以降現場に来ていたメンバーは殆ど別部隊だったそうです。また、信頼できる職長さんも別の現場でトラブルが発生して現場には来れず、電話での指示のみで進めていたとの事でした。
慎重に見極めて依頼したつもりでしたが、解体工事の現場では日替わりで人が入れ替わるのはどうやら普通にある事のようでした。知らなかったのは自分だけだったのです。

 

色々な方の知恵と技術を借りて、補修はうまく出来ました。
理事長さんも、「今後の参考になりましたね」と声をかけてくださいました。
このマンションでは理事長さんが元ゼネコンの方で法務と現場に大変理解のある方でした。そのおかげで今回の一件ではスムーズに事が運びました。そうでなければ、こういった事案は管理会社を巻き込んだ上に理事会などでの報告や判断が相当な時間を要するところだったと思います。

 

結果的にここでは ”いい経験” をさせていただいた訳ですが、後からいろいろと考えました。
今回のような思い込みと結果の相違が著しいことは、よく考えてみたら日常よくあることです。 ユーザーは何らかのサービスを求めて依頼先を選ぶ場合、吟味する上での情報を収集します。 しかし収集した情報源が実際のサービスとは違っていて、がっかりするケースは誰しも経験のあるところだと思います。

 

むしろ、フェイクニュースよろしく誇大気味の広告はむしろ常識になっている感さえあります。
例えば、モデルさんばかりの会社紹介ホームページや他社の施工事例満載のパンフレットなど、よく見ていくとそんなものが溢れています。

 

フェイクイメージでの事業展開はインスタントに横展開ができるので、金太郎飴のように全国的に全ての業界に拡がっています。そういう事情もあってプロモーションの重心がより信頼感のある個人発信のSNSに移っていったとも言えると思います。SNS運営サイドの収入源でもあり、追いかけるように企業広告がどんどんSNSにも流れ込んできています。乗り遅れるまいと、わざわざSNSアカウントを複数開設してコピペで記事を量産しているような事例も急増中です。

 

本当の顔で失注してしまうよりは嘘の顔でもいいから受注を取りたいというのが本音でしょうが、現代ではその考えは大変危険です。ネットで多くを見ているユーザー側からはその発信がオリジナルでない事は意外と容易に推察出来てしまうからです。

 

何らかのサービスで嘘の顔に騙されたり、間違えた事がある人は、フェイクイメージにとてもセンシティブになります。直感一発でわかってしまうのです。これほど世の中に蔓延していれば、あたりまえと言えばあたりまえですね。

 

 

K社社長は「下請けまかせ、その場限りの人員手配。その日、誰がどこで仕事してくれたのか?分からないで日々やり過ごす」「せっかく依頼してもらったのに、こんな仕事をしていてはいけませんね」と補修費用は全額負担していただけることになりました。

 

 

 

あなたの会社では、お客様から本当の顔が見えるようになっていますか?また、その顔をお客様の信頼に値するリアルな顔になるよういつも気にしていますか?

 

 

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