大阪時代、注文住宅営業の仕事をしていた頃のことです。
分譲住宅では外構・造園がセットで仕上げられていて完成した「住まい」の雰囲気があるのに、注文住宅となると途端に外構・造園が省かれるのでした。
注文住宅でも建築条件付きの自社の土地に建ててもらう場合は団地内の建築協定 ※ などを理由に反強制的に外構・造園をセットにしていましたが、いわゆる一般地(建て替えや自社土地以外)ではなぜか資金計画段階で外構・造園は請負契約外の別途工事という扱いになっていました。(金額の数字表記ではなく、別途工事という漢字表記になります)
※ 建築協定とは環境保全や個性的な街づくりを目的に、土地の所有者全員の合意によって建築基準法などに重ねて一定のルールを加えることです。
国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000002.html
素朴に疑問に思ったので、先輩に「なんでなんですか?」と尋ねてみますと、「外構・造園入れてたら見積もり遅なるし、予算オーバーで契約取れへんで」と言った答えでした。ぜんぜん契約の取れない私には納得できるというか、変に説得力のある回答でした。
営業マンは“家”を売るのが仕事。(残念ながら売る対象は多くの場合、お客様の求めている“住まい”ではありません)
競合した際に比較されやすく利幅の小さい外構・造園は戦略上省くのが定石ということだったのです。
そんな調子でお客様から契約をいただいて、お引き渡しをしていると…こんなしくじりをすることになりました。
↑ CASE1 水はけのよくない場所(水たまり)ができてしまう。
↑ CASE2 水みちができて植栽や土がえぐれて道路に流れ出してしまう。
↑ CASE3 特定の雨水ますに集中しすぎてあふれてしまう。
こういったことは、どうして発生してしまうのでしょうか?
STAGE1 ・外構・造園を別途にしてしまう → 設計者が具体的に排水計画を考えていない
STAGE2 ・設計者が具体的に排水計画を考えていない → 排水計画は水道屋さんにおまかせ
STAGE3 ・排水計画は水道屋さんにおまかせ → 予算化されている範囲の最低限の計画・施工に
排水計画は水道屋さんにおまかせで予算化されている範囲の最低限の計画・施工ということは、だいたいは屋根に降る雨水の排水だけの計画になります。 よほど小さな土地である以外は庭に降る雨水の方が多い訳ですが、この大半の雨水についてはノーガードとなります。
こういった入居済み新築住宅(未完成版)は、日本全国で見られます。 このままの状態でどんどん雑草が生えてきてたり、庭にモノが溢れてきたり、という家も多く見受けられます。
日本の住宅の性能は良くなったと言われますが、こういった景色を見ていますと本当に質が上がったと言えるのか?疑問がわいてきます。
↑その結果、土地が大きくても小さくても雨排水計画は、だいたい最低限のこんな感じになっちゃいます。(○印は雨水マスです)
↑こちらは外構・造園別途の例(その1)工事中かと思いましたがよく見たら入居済!のようです💦
↑こちらは外構・造園別途の例(その2)こちらも入居済!のようです(既に雑草が💦💦)
とはいえ、実際に予定の敷地を見れる機会に雨は降っていないことが多いでしょうし、降ってたら降ってたで早く切り上げたくてそれどころではないかもしれません。とにもかくにも最後にどこまで完成したものにするのか?という『ゴール』イメージと、そこへたどり着くための『想像力』が必要です。
では、どのようにすればいいのでしょう?
お客様の予算や契約内容は様々で、外構・造園がすべて含まれているというケースは実際には稀かもしれません。
例え、外構・造園予算が別途であったとしても、住宅の設計者は頭の中でそこに住宅が建ってから雨をたくさん降らせてみて欲しいのです。
そこの実際の生活の場で、大量に一度に降った雨が側溝に流れていくまで追いかけてみるのです。
「どうせ予算がないのに、手間をかけられない・・・」と言わずに、 「完成したもののクオリティで勝負する!」プライドを持って欲しいと思うのです。
予言します。
その姿勢は、必ず価値観の合うお客様に見つけてもらえることになるのです。
あなたの会社は、外まわり(外構・造園)を含めて住宅の提案をされていますか?