外食産業事情と地域格差
コロナ前には9,000店を超えていたファミリーレストランチェーン店舗数も現在では2/3ほどに減少しています。要因は以下のような点だと言われています。
⚫︎少子化・子育て世帯の減少
⚫︎物価上昇で外食頻度が抑制
⚫︎昼食(テイクアウトなど)即食(温めるだけで食べられる)が定着したこと
⚫︎人手不足
⚫︎食材コストの上昇
↑ファミリーレストラン店舗数(全国的には減少中)
一般に目にする統計は全国の合計や平均であることが多いのですが、日本の国内では様々な地域格差が増大中です。どの地域で見るかで、その景色は非常に違って見えることには常に留意すべきです。人口流入が続く都市部なのか、人口流出はなはだしい地方なのかで全く事情は違っているからです。
下のグラフは都道府県別のファミリーレストラン件数ですが、典型的なロングテール型です。(ロングテールについては あるYouTuberの指南書から に詳しく記しています)全国平均以上の都道府県11に対して全国平均未満の都道府県は36です。人口・ファミレス件数の多くは都市部偏在ですが、実際の国土面積は地方がほとんどを占めている訳です。つまり、日本全国では人口あたりでファミレス件数の少ない景色のほうが「スタンダード」ということです。
↑都道府県別ファミリーレストラン登録件数(圧倒的に都市部に集中)
次に人口あたりのファミレス件数を見てみると、上位はやはり関東エリアが独占しています。しかし、必ずしも人口構成要因ばかりで順位が決まっているようではなさそうです。人口が多くてもファミレスが少ない県もあるのです。例えば、福岡県は九州では最も人口が多く、九州中の若者が集まる人口集中県ですが、人口あたりのファミレス件数は意外と低いのです。
福岡県では地元系のうまくて安い食べもの屋さんが多くコスパ最高なので、ファミレスの参入・定着が厳しいのかもしれません。そういえば、シンケンの福岡立ち上げの際には5年ばかり福岡に通って外食ばかりしていましたが、そこでしか食べられない看板メニューを持つ店がたくさんあって忙しく、ファミレスに入ったのは2〜3回ぐらいでした。
↑人口10万人あたりのファミレス店舗数ランキングは関東周辺に集中(2021年)
そのむかしファミリーレストランなるものがもの珍しく、わが街にもでき始めていた頃はその名のとおり家族連ればかりでした。しかし、最近ではファミリーレストランに入っても店内にファミリーを見かけないことも普通にあります。ファミリーレストランという業態が全国的に成り立つ時代は終わりつつあるのかもしれません。
↑人口10万人あたりのファミリーレストラン登録件数ランキング(関東圏はほぼ不動)
うちの家族は25年前に神戸市から鹿児島市に引っ越しました。大阪生まれ大阪育ちの私は、その際に地域性の違いを初めて体験したのです。しかし、仕事に慣れて鹿児島県内のあちらこちらに出掛けるようになると、鹿児島市内とそれ以外の県内地域との格差のほうが神戸市と鹿児島市以上により大きく感じました。
鹿児島市内から少し離れると、役場・スーパーや飲食店・パチンコ屋にいたるまでの賑わっているべき場所にも「ひと気」がないのです。どこに行っても混み合っていた大阪の頃の感覚とは大きく違っていました。また、鹿児島市以外の地方に出向くと廃校になった小学校や中学校に出くわします。シンケンの同僚の中にも母校がなくなってしまった若者が多くいました。まさに「過疎」という単語が身近に迫るもので、それは衝撃的でした。神戸市に住んでいた頃の認識からすると、地域だけではなく時間的にも急に未来に移動したような印象でした。
少子化問題などから人口統計データをよく目にするようになってきましたが、たいていそれは全国の集計です。ファミリーレストランの店舗数と同じく、実際には地域格差は大きくて住んでいる場所によってはその実感はずれるのは当然です。都会人は人口やその構成に関するイメージを10年以上過去の感覚を持っていて、地方人は逆に10年以上未来の感覚を持っているのです。
↑「人口ピラミッド」に対する地域によっての実感は10年以上の開きがある(例えば現在が仮に2030年として、都会人は左側の2005年、地方人は右側の2055年のような肌感覚なのです)
急場での部分最適の例
これまでファミリーレストランであった店舗では、閉店は免れたとしてもカフェやコーヒーショップへの業態変更が進んでいます。客ひと組の人数は減少(ひと組客単価減少)、滞在時間は長時間化(回転率悪化)、メニューは美味しい飲み物+軽食・スイーツ(種類は減るものの手間はかかる)といった変化を受け入れた上で戦う必要があり、これは経営的に三重苦とも言えます。とにかくコストを下げつつ、客数を増やさないといけない訳です。
地元の以前ファミレスだったお店がコーヒー屋さん(カフェ業態)になっていました。入ってみると、店の内部はそれほど変わっていないようです。つくりはファミレスそのものなので、カフェとしてはゆったりしています。変わった点といえばレジカウンターの上に機械やサイン類が色々載っていて無人化されていますので、誰も声かけしてきません。「笑顔で挨拶」はないようです。
席はあちこち空いているのですが、何人かエントランスに並べられた椅子に座って待っています。どうやら混んでいなくても人数・席のタイプとともに記名して待たないといけないようです。大阪の人なら即文句を言ってそうな状況ですが、鹿児島の人はみな温厚です。先客にならって、ひとまず記名して待ちます。
↑様々な機材やサインで占有されるレジカウンター
15分ぐらい待っていると、前に待っていた人たちが順にはけて私の番になりました。ようやく案内してもらった席につくと、その横の席のテーブルにはズラリと店を後にしたお客の食器類がそのままに残されています。CAFEへの業態変更と機械化によるシフト人員削減によってか人手が足りていないようです。
そのうち手が空いたら片付けるんだろうと思いきや、30分経っても1時間経っても隣のテーブルの上を片付ける気配がありません。この場所は厨房前の配膳カウンターの目の前でスタッフ全員が目の届く場所ですから、気付いていないということはないはずです。
トイレに立った際に他のエリアの空席を見てみると、あちらこちらに片づけられていないテーブルが散見されます。というよりお客のいないテーブルは全て食器類が載っている状態です。案内することになったテーブルを客を待たせておいて片付けるスタイルです。よほど必要に迫られないと片付けないのが「スタンダード」のようです。
厨房カウンターのあたりに目をやると、10代のアルバイトっぽい子たちばかりです。カウンターまわりでおしゃべりに熱が入っています。お店が広く少々騒いでも声も聞こえないし客席からは見えにくいので、いっそう盛り上がるのでしょう。
私も高校生のころ大阪の繁華街の喫茶店でウェイターのアルバイトをしていました。その頃もお店はアルバイトスタッフばかりで回していました。でも古参のお姉さん(といっても20歳ぐらい)がいて精算後の空いたテーブルの片づけが遅れると、こっぴどく叱られたものでした。時代感覚も変わってきたのかもしれません。
↑「ここはどこの国だ?」と感心するぐらい意地でも片付けない
「こりゃあきれたもんだ」と思ってトイレから戻るときにスタッフの人たちが別のところで忙しくしているのを目撃しました。そうです。セルフレジに慣れていないお客のサポート対応です。このお店に来ているお客の年齢層はかなり高めでシニア中心です。
私の席はセルフレジカウンターがよく見える位置でしたから、気になって注目していると10分に1回ぐらいはスタッフがセルフレジのところに呼び出されています。セルフレジと言いつつも、ほとんどスタッフの人たちが客に代わってタッチパネルを押しまくっています。
↑頻繁に呼び出される気の毒なスタッフさん(セルフレジに慣れていないお客の対応でかえって人手がかかっている状態のようです)
全てのテーブルにはタブレット端末が置いてあります。タブレットは注文・精算ともに席で済ませることができます。またスタッフに対してのサイン表示(そのテーブルの客利用の有無・未精算か精算済か)も兼ねています。注文した品を運んできてもらうとき以外はスタッフと顔を合わさないのです。一言も会話をしなくても済みますが、これでは「食い逃げのハードルも低そう」と思ってしまいました。
↑すっかりお馴染みになってきた卓上のタブレット(席で支払いもでき便利ですが、レシートは出ないようです)
↑レジカウンターは年寄りの自宅居間のような散らかりようです。駐車サービス券は勝手に取っていくシステムです。(手に持っているのは駐車サービス券)
↑2台目のセルフレジ(お客の残していったレシートが山盛りです)
工務店の「適応」はつねに続く
工務店経営においては環境の変化は常にあるもの。経営者にとって変化への対応はいつものことですが、とても動きが早いのが最近の流れです。情報が伝わるのが早く、量も多いためにその傾向はますます強くなっています。
判断の下敷きにする際には加工・平均化された情報ではなく、直接御社のビジネスに影響し得るものかの見極めが求められます。往々にして様々な企業向け売り込みには全国的または世界的トレンドなどの都合のいい一面だけが用いられますので注意が必要です。
今回、例として見てきたファミリーレストランの業態転換の場合、実際にお店を利用して様子を見ていると、全国チェーンであるが故のスピード・コスパというメリットと、対策に地域性や個別性を盛り込みにくいというデメリット両方を感じるところです。
実は、このお店の道路向かいにはもう一軒ファミリーレストランがあります。そちらは現在もファミレスのままですが、客席はガラガラです。個人的にはあのどれを飲んでも美味しくないドリンクバーが苦手です。食事はそこそこ美味しくても、飲み物がサイテーなのはどうもいただけません。
スタバやドトールなどのコーヒーチェーンが全国津々浦々で味の水準を引き上げてしまいましたので、ひょっとしたら私と同じように考える人が増えたのかもしれません。そうなると、このもう一軒のファミリーレストランはそのうち危ないかもしれません。
↑すっかり定着したドリンクバーですが、あまりおかわりをしている人を見かけなくなりました。
社長の会社では、将来の変化にどうそなえていますか?「御社の商圏内で本当に有効な打ち手なのか」をどのようにして確かめていますか?