売れる力とは? 2024.01.22

K氏版「中国事情」

 

 

中国式バブル崩壊

 

 

昨年暮れに会った中国通のK氏。短い時間にいろいろな話をしてくれました。中国のバブル崩壊は今でこそ調べれば分かることですが、10年前に現地で彼はそれを感じ取っていたそうです。取引銀行がおかしくなって慌てて借り換えをしたり、銀行担当者からよくわからない理財商品(高利回りの投資商品)を執拗に勧められたりと、あやしい兆候はいくらでもあったそうです。

 

しかし、現地のエリートたちは「経済崩壊」の経験がなく、まだまだいけるとばかりにこぞって投資に励んでいたそうです。実際、中国人民の収入に対する貯蓄率(実際は投資を含む)は数年前まで40%を超えていたという統計もあるそうです。借金で消費し稼いだ分は投資に使うのが普通の感覚だったのです。中国経済の不調は「ゼロコロナ政策」がきっかけなどと言われていますが、K氏に言わせると「崩壊は10年前からとっくに始まっとったわ」とのことです。

 

中国は中国共産党が統治している超資本主義社会です。最近では中国国内の中小銀行の破綻と再編が進んでいます。個人ローンの不良債権化が急速に進んでいるのです。お金を借りる人が減り、貸し倒れが増えている訳です。なんと、中国ではネットオークションで不良債権が販売されているそうです。(売れないようですが)

 

銀行が、不良債権を束にしてまとめてディスカウント、別の企業に買い取ってもらう動きが活発になっているそうです。これは、銀行にとってはいわゆる「損切り」です。相当な損失が出ますが、損失が膨らむよりマシという状態です。日本のバブル崩壊でもそうでしたが、銀行が今後の景気動向を相当悲観している証左でもあります。

 

10年前の中国では、すでに金融関連業種の所得が突出していました。中国では高水準の経済成長下で金利水準が高いということはありますが、理財商品をはじめとしたハイリスク商品の販売手数料が貢献していたものと見られます。理財商品には不動産開発の資金源となっているものもありました。銀行にとってはノーリスクで不動産開発に資金供給しつつ、手数料収入を得ることのできる美味しいビジネスだったのです。

 

 

↑2014年上場企業高級管理(高管)人員と従業員平均所得の比較(業種別)【金融関係の所得が突出しています】

 

中国人力資源・社会保障部の労働賃金研究所「中国薪酬(報酬)発展報告2015」から

 

 

 

外資を取り込み巨大化した「モンスター」

 

 

上記の資料は10年ほど前のものです。ちょうどその頃、木の窓を生産している中国の工場にシンケンから出張したことがありました。工場は南京でしたが、ガラス工場が上海郊外にあって上海にも滞在しました。

 

現地の工場で色々と打合せをしましたが「日本からのオーダーはロットが小さいのに細かい注文が多い」とぼやかれてしまいました。こちらも外資系のガラスメーカーでしたが、国内のガラス需要の規模が桁違いで半端なく大きいので「そう言われるのも無理もないな」と思いました。(結局、その後には日本で使用する木の窓のガラスは日本国内で調達することになりました)

 

2015年の上海は2010年の上海万博の後で、発展目覚ましい場所でした。そして意外なほど街は綺麗でした。古い街並みも残っていてかつての上海っぽい雰囲気がありましたが、都市化した部分は東京のようです。その後南京のホテルの近くにスタバがあって、入ってみました。「中国に来てまでスタバでなくても」と思いましたが「発見」がありました。

 

日本のお店よりひとまわりデカいパンが、ショーケースに並べられていました。値段を見るとびっくり。日本のスタバより高いのです。当時の中国人民の所得水準は、大儲けしていた金融・保険関係企業の一般社員でも30万元(約600万円)、その他業種は10万元台(約300万円台)です。

 

農民工と呼ばれる農村部からの出稼ぎの人たちの所得は、実際にはもう一桁低かったりします。そう考えるとスタバのパンは、ものすごい値段だった訳です。

 

 

↑2015年の上海の夜と朝の風景(夜が明けると古い上海が現れます)

 

↑南京の高速鉄道駅の風景(とにかく全てが巨大です。石材のサイズがデカくて驚きました)

 

↑南京のスタバのショーケース(値段を見てください!当時も1元=20円でしたからかなり高いです)

 

 

広東省東莞市にホシデン(株)の工場があります。ホシデン(株)は大学時代、よく勉強を教えてくれた友人が就職した会社です。東莞市の工場は2012年からの操業だったと思いますが、どうやら閉めるようです。調べてみると、広東省東莞市の人口ピークは2013年、その後は年平均30万人ペースで減少してきたそうです。

 

この事実はK氏の言う「崩壊は10年前からとっくに始まっとったわ」という時期と符合します。東莞市ではこの時期に外資による工場進出が止まってしまったのかもしれません。ひょっとしたら、。ホシデン(株)の東莞工場は操業した途端に現地の衰退局面に出くわしていたのかもしれません。

 

 

↑ホシデン(株)の東莞工場(ホシデン(株)WEBサイトより)

 

 

 

どうしてこれからが危ういのか?

 

 

ご存知の通り中国は海外の資本と技術を呼び込み、豊富で安い労働力を武器に経済発展を遂げてきました。また、豊富で安い労働力がやがて中産階級となって旺盛な内需経済が形成されるとの期待もありました。バブルがはじけても、厚い中産階級層が形成されていれば、内需によるさらなる発展が描かれていました。

 

しかしながら「中国には平均月収2000元(約4万円)の人民が10億人いる」とも言われています。正確な統計は発表されないお国柄なので事実かどうかは定かではありませんが、富が極端に偏っているのは間違いないようです。1人が1億円持ってるよりも100人が100万円持ってるほうが、経済活動は活発になる訳ですが、中国ではそうなっていないのです。どうやら、富めるものが富んでいく格差社会が定着してしまったようです。

 

「世界の工場」という役割を終えた後には「電池・半導体・太陽光パネル」といったハイテク産業を育成してきましたが、ここに来て様々なブレーキがかかっています。そもそも「電池・半導体・太陽光パネル」といった分野は他国の材料・技術なしでは先端製品を作れません。また、価格の「安さ」や労働力の「多さ」はやがて競合を生みます。

 

経済発展の中で「幅広い中産階級」と「中国でないとダメな看板産業」を作りきれなかったことが最大の問題であったと言えます。【中国語で中産階級というと月収3000元(約6万円)を指すのだそうですが…】これは、国単位の大きな話のようでいて1企業の経営についても同じです。「自社製品の価値を認めてくれる顧客」「自社でないとダメな看板商品」を作ることは、どこの世界でも経営者の課題なのです。

 

 

 

社長の会社では「自社でないと提供できない」と言える事業がありますか?あるいは、そのような事業をつくろうとされていますか?

 

 

 

 

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