売れる力とは? 2024.02.26

「最近の病院」考(後編)

「最近の病院」考(前編)からつづく

 

 

今どきの「入院体験録」

 

 

その日は日曜日でした。A病院への入院は手術前日のお昼前でした。

 

通用口のようなドアから歩いて入るのがちょっと違和感がありましたが、意外と多くの入院患者さんがいて入院受付の数人のスタッフがテキパキとさばいていました。持参品にない必要なものは受付横にコンビニがあってそこで調達するように案内されました。このコンビニは病院内専用ですが、職員の方がひっきりなしに食料を買いに来ています。けっこう繁盛している感じです。

 

手際よく病室に案内されましたが4人部屋です。すでに3つのベッドはカーテンが閉まっていて、埋まっているようです。入院前に一応個室の希望は書きましたが、私のような軽い手術で短い入院の患者にはまわってきませんでした。別に大部屋でも気にならないのですが、21:00の消灯が早過ぎることと、好きな音楽が音を出して聴けないのが気になっていました。

 

お昼前からベッドに寝ころぶ気にもならず、面会用の折りたたみ椅子を出してきて座っていたらすぐに昼ごはんが出てきました。普通に食べていたつもりでしたが、食べ終わるのはいちばんビリでした。それにしても他の3人の患者さんの食べる早さには慄きました。その日の夕食以降は絶食です。

 

 

次の日午後からが手術でしたが、A病院では救急対応もあるため手術開始は2時間以上遅くなりました。手術は全身麻酔でしたので手術室では秒で気を失い、気がついたら消灯時間の21:00を過ぎていました。結果として33時間ほどの断食となりお腹は空いているのですが、部屋は真っ暗ですし、おしっこの管も入れられているし、鼻には詰め物がしてあって口でしか息ができない状態でした。じんわり痛みも戻ってきます。

 

予定では術後のご飯はおかゆとのことで楽しみにしていたのですが、すでに時間が終わっていたのでもうありませんでした。そのかわりに看護師さんが例の繁盛している受付横のコンビニで食料を買ってきてくれました。ありがたい。断食明けの夕食です。「吉岡さ〜ん。けっこう売り切れが多くて、こんなチョイスですみません!」と言ってドサっと置いてくれたその日の晩ごはんは、確かに個性的なチョイスでした。

 

 

↑入院2日目、手術後に看護師さんの買ってきてくれた晩ごはん(ガッツリ濃いめの組合せです)

 

 

翌日からは通常の病院食です。朝は6:00に照明が点灯、検温です。8:00に朝食、12時に昼食、18:00に夕食というサイクルです。21:00を過ぎると毎晩真っ暗にされますので、テレビを見ようにも最近のテレビは画面が眩し過ぎて、見ていられませんでした。本を読むにしてもベッドごとの照明は天井からの集光型のダウンライトだけです。点けるとカーテン越しに他の3人のところも明るくなってしまいます。看護師さんのいるスタッフステーションは21:00以降はわずか2人の体制で広くて明るいので、空いている机に座らせて欲しい感じでした。

 

 

日中の居場所として、デイルームに入院した日から目をつけていました。自動販売機が置いてある面会や休憩をする場所で、各階にあります。A病院では1フロアにふたつの病棟があるのですが、デイルームは2病棟共用で1か所しかありませんでした。A病院は3年前に移転・オープンしましたので、面会が制限されたアフターコロナ仕様なのかもしれません。 午前中は日当たりも良くパソコンを持って行ってひとり陣取ってみます。椅子もたくさんあって、なかなか居心地の良い場所でしたが面会の人たちが話しづらそうなので、14:00〜の面会時間には遠慮させてもらいました。よくよく考えると、A病院には食堂というものがありません。食堂があったらパソコンをカチャカチャするのも気にしなくてよかったのですが。どうりでコンビニが売り切れるぐらい繁盛している訳です。これもアフターコロナ仕様かもしれません。

 

 

↑入院先の病院のデイルームからの眺め(桜島が望めてまずまずです)

 

↑入院先の病院のデイルーム(1か所しかなかったので締め出されることに)

 

 

 

「中核大病院」で働く人たち

 

 

面会の空きを縫って各階のデイルームを占拠していた私ですが、思わぬ伏兵が現れました。実習に来ている看護学生たちです。彼女たちは1病棟1フロアあたり5〜6名来ていました。12:00〜14:00は休憩・控室として患者は使用禁止でした。緊張しながらの実習ですから退避できる場所は必要かもしれません。実習中も怖い看護師さんに怯えながらみんなで固まって端の方につっ立っていましたから。。。

 

A病院内を数日ウロウロしていて思ったことですが、看護師さんをはじめスタッフが動きやすそうなのです。そして、スタッフステーションにいっさい壁がありません。それゆえに実習生も居場所がなかったのかもしれませんが、病室入り口はガラス張りになっていて、スタッフステーションからほぼ全ての部屋の様子が常時見えるようになっています。看護師さんの業務効率を向上させるべく「働き方改革」を意識した設計かもしれません。

 

入院は初めてですから病院には詳しくはないのですが、同じく総合病院のB病院にお見舞いに行った際はこんな感じではありませんでした。B病院も9年前に移転、新しい建物でオープンした中核病院です。A病院と同じくワンフロアに2つの病棟がありました。デイコーナーは6つもあって混み合わない感じでしたし、レストランもありましたので入院患者本人は「快適!快適!」とゴキゲンでした。

 

しかし、スタッフステーションからは病室の様子が見えにくく、狭いスペースに看護師さんが大勢いるイメージでした。ネットでフロアマップを探していたら、B病院の穏やかではない報道記事がずらずらと出てきました。「B病院では昨年およそ70人に上る大量離職があり、入院病床の稼働率を最大7割まで減らすことになった」というのです。また、緊急性がない手術を延期するとも書いてあります。

 

私のような緊急性のない患者は、即アウトでしょう。「このような多くの看護師の退職は非常に痛いところ。残ってもらう取り組みを進めていく必要がある。緊急性を要する患者は、これまで通り引き受ける予定」との事務方の責任者の談も載っています。B病院は看護師の退職を防ぐため「チューター制度」を新設、先輩が悩みを聞くなどの取り組みを進める方針とのことです。なんかズレたこと言ってるなと思いますよね。実はB病院は公立病院なのです。

 

 

↑入院先のA病院の7階フロアマップ(スタッフステーションから各病室が見えるようになっています)

 

↑大量離職のあったB病院の7階フロアマップ(外観はカッコいいのですが、スタッフステーションからの見通しが良くないです)

 

 

 

「医療現場」での見えざる戦い

 

 

入院中、部屋に来てくれる看護師さんは、どんどん入れ替わり立ち替わり違う人になっていきます。入院日数が少ないので同じ人とはそう何回も会わなかったぐらいでした。シフトが複雑なのでしょうか?部屋に来てくれる看護師さんは若い人が多いのですが、いまいち慣れてない雰囲気がします。オープン当初から働いているのか、何人かに聞いてみました。

 

すると「まだ1年経ってません」という人が意外と多くいました。どうりで慣れてないはずです。コロナ以降は看護師さんの転職も激しいようですし、ひょっとしたらB病院から転職してきた人もいるのかもしれません。暇だったので、病室で転職サイトなんかも見てみましたら、看護師さん専用の転職サイトもいっぱい出てきました。そこでは辛辣な口コミなどもドワーっと書かれていて、えげつない業界であることが見て取れました。

 

特に大きな病院は情報量が多く、経営側としてはたまらん時代になったものです。それらのサイトによると、就業中の看護師が辞めたい理由の上位は、1位「看護職の他の職場への興味」、2位「転居」、3位「子育て」、4位「勤務時間が長い・超過勤務が多い」という結果だそうです。転職サイトでさんざん煽っておきながら1位「看護職の他の職場への興味」という表現には閉口してしまいますが、ネット上での口コミが増えたことで「となりの芝生」が見えやすくなったということです 。

 

 

↑B病院口コミサイト(残業多い、シフトの自由度低い、が顕著です)

 

 

 

↑A病院の口コミサイト(残業、シフトの自由度、看護師の年齢層には関連がありそうです)

 

 

 

社長は自社や業界のネット上の口コミをご覧になられたことはありますか?真偽のほどは様々でしょうが「火の無い所に煙は立たぬ」と、昔から言います。入社したい人たちばかりではなく、意外と顧客がそういうサイトを見ている現実は十分意識しておいたほうが良さそうです。

 

 

 

※お知らせ:2024年3月より当面、本メールマガジンは不定期配信となります。ご了承下さい!

 

 

 

 

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