きっかけとなる「口コミ」
以前から右側だけ鼻詰まりしやすかったので、以前からある地元の耳鼻科に通っていました。「鼻の中がアレルギーで腫れている」ということで、薬をもらってしばらく飲んでいました。「薬飲んで治るものかいな?」と思いながらも数ヶ月、大した改善は見られません。
そんなある日、仲間の売れっ子コンサルタントNさんと広東料理を食べている際にこんな話を聞きました。
Nさん:「吉岡さんも?僕も片方の鼻がいつも詰まっていて、セミナーや面談の際に話づらくて手術したところなんですよ」
吉岡:「えー。そうなんですか。手術って大変でしたね」
Nさん:「そうでもないんですよ。ひと晩入院で終わりでしたから、吉岡さんもされたらいいと思いますよ。」
吉岡:「そんなに簡単にできるんですね」
Nさん:「術後はじんわり痛いのと、詰め物で鼻から息ができませんけど。もっと早くやっとけば良かったと思いますよ。本当」
という口コミ情報を得て、私はかかりつけのK耳鼻科ではなく新しく開業した別のT耳鼻科に行ってみることにしました。通っていた耳鼻科はおじいちゃん先生で、手術の際に紹介する大きい病院との関係が細くなっていると感じていたからです。
突然の「診断」
T耳鼻科に行ってみると、新しく開業したばかりなのに駐車場がいっぱいです。しかも車中で待っている人が大勢いて、子供の患者が多いです。おじいちゃん先生のK耳鼻科とは人気が違うのは一見して分かります。
ずいぶん待たされましたが、やっと診察の順番が巡ってきました。T先生はサバサバした小柄な女医さんです。問診もそこそこに早速画像を撮りましょうということになりました。別室に案内されて最新機器とおぼしき機械で画像を撮ります。さらに待つことしばらくで、再度呼ばれました。
T先生:「はーい吉岡さん、これ見てください。鼻の中の仕切りの部分が曲がっていて、右の鼻の中を塞いでいます」
吉岡:「うわー」
T先生:「右の鼻からは、あんまり息できなかったでしょう?少し腫れてますけど、手術したらスッキリ通りますよ」
吉岡:「はい。ぜひお願いします。どんな手術なんでしょうか?」
私はNさんから話を聴いていましたが、いちおう尋ねてみました。
T先生:「鼻の中のこの骨とこの骨を、一部取ってしまいます。鼻の内側からできますから、お顔には傷はつかないですよ」
T先生は鼻の内部の模式図を指しながら、説明してくれました。
吉岡:「切るのは、右側の鼻だけですよね?」
T先生:「両方の鼻の中を切って、骨を形を整えます」
私は、コンサルタント仲間のNさんの話と違って大掛かりであることに気が付きましたが、お願いすることにしました。その後、紹介状を書いてもらって、鹿児島市内の大きなI病院に手術前の診察に行くことになりました。
思ったとおり開業直後のクリニックは最新設備を有し、画像による診断がスピーディです。そして手術になる際の大きな病院との連携がやはり素早い。この辺りは業界関係筋からも聞いていましたので、思ったとおりでした。
↑私の頭の輪切り画像(本当に思いっきり曲がっています!)
スピード入院の「戦慄」
鹿児島市内の大きなI病院に行ってみると、こちらもあたらしい建物でした。最近移転したばかりです。人口減少中の鹿児島県では、鹿児島市に高機能な中核病院を重点整備する方針なのです。これによって地方の医療資源の減少を補うという考え方です。地方と中央で医療機関の役割分担を明確にし、高度医療の必要な患者は鹿児島市で対応するという苦肉の策です。
そのような状況では「なかなか手術や入院の予約は取れないだろう。ましてや私のような急を要しない患者は後回しになるのだろう」と思っていました。
I病院の担当医は大柄で筋肉質のF先生でした。見るからに体を動かしている感じがします。
F先生:「吉岡さん。今月末のこの日は空いてないんでしょうねえ?急すぎますよね?ちょうどここなら今日空きが出たんですけど」
と、カレンダーを指差しながらハキハキでかい声で尋ねられました。
吉岡:「はい。大丈夫です。でも、入院は何日間ですか?」
F先生:「5、6日になると思います。詳しい説明はまた、別のものがしますけど。4、5時間ぐらいです。全身麻酔でしますので。気がついたら終わってますよ」
これまた、コンサルタント仲間のNさんの話とは違ってきました。えらく本格的になってきています。でも、ここで躊躇していてもしょうがないし、スッキリするなら早い方がいいです。
吉岡:「調整します。。。」
F先生:「じゃあ。予約入れときますよ。いいですね?」
というようなやり取りを経て、両方の鼻の手術を約1週間入院して行ってもらうことになってしまいました。自分の体のこととなると、基本医者のいいなりです。ましてや入院などこれまでしたことのない私にとっては何もかも初めてのことばかりです。
冷静に振り返ってみると、一般の顧客が住宅を取得する場合とほぼ同じです。最初に相談した人が信用できそうだったら、あれよあれよと事が進んでしまいます。自分で考えても仕方がないと、任せてしまうのです。また、その逆もしかりです。最初に相談した人が信用ならない場合、その人からの紹介は断ってしまうはずです。
一般的に住宅取得を何度も経験している人は稀です。仮に経験があったとしても取得する場所や構造、法規や融資の関係など違ったケースであることがほとんどかと思います。自分で考えてもよく分かりませんし、そのような時間もありません。
ひょっとすると住宅業界の人たちは、自分たちが顧客から好印象を持ってもらいにくい事をうすうす感じていて、SUUMOカウンターや地元の不動産屋さんに謝礼を払って紹介してもらうようにしているのかもしれません。
しかし住宅業界の場合は、中立性を求めてSUUMOカウンターや地元の不動産屋さんに相談したとしても、誰が誰にお世話になっていて誰から誰にお金が動いているかを考えると、構造的に難しい相談かもしれません。
入院前の私は、まさに「まな板の上の鯉」状態です。自身が入院・手術で「鯉」になってみて、家を初めて持つ人の不安と動揺に想いを馳せるのでした。
次回、「最近の病院」考(後編)につづく
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