続・家づくりの玉手箱 2023.08.14

「アフターメンテナンス」の極意(その1)

 

 

じわじわ気づく「重大アフターメンテナンス」

 

 

自宅の北側にはコンクリート擁壁があって、その上に赤く塗った集成材がのせてあります。この擁壁+集成材はお隣のフェンスも兼ねています。これらは自宅の敷地内にありますが、ちょうどお隣さんが新築中に作らせてもらったので、わが家と兼用になっているのです。

 

自宅側から見ていると20年の間にカズラが成長してこの擁壁+集成材のところまで攻めてきていました。西側・南側の木塀は既に飽和状態になり、新天地を求めて伸びてきたのです。(飽和状態のカズラの様子は、こちら をご覧ください)お隣さんとは「お互い、攻めてきた植木は気になったら勝手に切りましょうね」という申しあわせになっていましたが、わが家側もあまりに茂ってきたのでちょっと気になってきました。

 

そしてある日、擁壁の上の集成材が朽ちて穴が空いてしまい、お隣さんがチラチラ見えているのに気がつきました。ついこの間まで見えていなかったのに、大雨のあと突然ボロッと崩れてしまったのです。カズラのことも気になるので、お隣さん宅に夫婦で見に行ってみたのです。

 

 

↑【自宅側】 最近、すき間が出来てきてお隣が見えるようになってきました

 

 

↑【図解】 赤い部分の擁壁に集成材がのせてあるのです

 

↑【お隣側】 入らせてもらって撮影(半分ぐらいまでカズラが侵蝕。えらいことに)

 

 

 

お隣さん側の「剪定作業」

 

 

現実は想像をはるかに超えていました。もはや「攻めてきたら勝手に切りましょうね」などと言っている場合ではない状態でした。時間をかけて徐々に攻めてくるので、お隣さんも言いそびれてしまっていたのかもしれません。翌週、お隣さん側の剪定をさせてもらうことにしました。

 

わが家側は擁壁+集成材の南面になりますが「つるが伸びてきてるなー」というぐらいでした。お隣側は北面になるのですが、猛烈な成長ぶりでした。ひょっとすると、風通しや日当たりなど生育条件はわが家側よりよいのかもしれません。北側だからと完全に油断していました。

 

その日は、夫婦ふたり完全装備でお隣さんに入らせてもらい、朝から剪定作業開始です。妻はカズラの先っちょになる東側から、私は根元のある西側から手分けして取り掛かりました。程なく妻が「うわっ!」と声を発しました。虫か何か出てきたのだろうと見にいくと…

 

 

↑【お隣側】 妻がカズラをビリッとはがすと集成材がいっしょに!

 

↑【お隣側】 中のボルトまで丸見えになってしまいました…

 

 

「どんだけ怪力やねん」と言ったら「ぜんぜん力入れてない!」と妻。あらわになった集成材の中の方を触ってみると、確かに指で押しただけでぽろぽろとサイコロ状になって崩れてきます。これは、思ったより深刻な状態になってそうです。その日は伸び盛りの新芽の部分だけを刈り込んで終了としたのでした。

 

 

↑【お隣側】 カズラ剪定後に再度動画撮影(あまり変わってないようですが、これだけでも大変でした)

 

 

この状態は明らかに褐色腐朽菌の仕業です。その名の通り、木が腐った後に褐色になる特徴があります。褐色になるということは、鉄筋コンクリートで例えるとセメントの役割であるリグニンは残っているということになります。また、木材組織の鉄筋の役目をしているセルロースや鉄筋を束ねる針金の役目をしているヘミセルロースが分解されるため、サイコロ状でバラバラになるのです。褐色腐朽菌により木が無筋コンクリート状態になるということです。

 

腐朽菌は木材の成分を分解して栄養を得ています。腐朽菌の仲間にも色々種類があって、それぞれ生育条件が違います。木材は日本中のどこにあったとしても、その場所や木材の環境にあった腐朽菌がちゃんといて、条件が整えば必ず腐らせてしまうそうです。

 

 

 

新築時はどうなっていた?

 

 

その後、古巣シンケンのアフター部門に連絡。新築時の組み立て手順や納まりなどを説明しました。(毎日現場に通って写真も撮っていましたので)問題のコンクリート擁壁は、自宅より80cmほど地面が高いお隣敷地との土留めになっているのです。高さは自宅の地面から1.9mほどありますので、お隣の地面からは1.1mになります。しかし、この高さではお互いの目線が微妙に気になります。なので、あと40cmほど擁壁の上に集成材を載せることになったのです。

 

 

↑【新築完成時】 擁壁+集成材 カーポートなど全てが組み上がった状態です

 

↑【新築工事中】 トラックから集成材を降ろすところです(この時点ではお隣の窓が結構見えています)

 

↑【新築工事中】 実はカーポートの鉄骨は少し集成材の上にのっかっています

 

↑【図解】 こんなふうになっています。集成材どうやって入れ替えましょう(困)

 

 

当時、社員宅は実験の場でもありました。そういうこともあって自宅の場合も「現場で考えて寸法を取って即つくる」というような部分があちらこちらに点在しています。今回の集成材に関わる部分もそのような場所なのです。

 

そもそも、このような場所に集成材を使うことは稀かと思いますが、当時は「これでどのくらい持つのだろう?」みたいなノリで果敢に挑戦する感じでした。「社員宅で試したことをお客様宅に活かすのだ」という機運に満ちていたのです。でも、正直まさか20年も持つとは思っていませんでした。

 

完成した時点では、集成材とコンクリート擁壁を繋いで固定しているアンカーボルトの先っちょのナットなども露出していました。集成材に座掘りしてナットが埋まっている状態でしたが、雨降りの時にそこから水が集成材の中にどんどん流れていっているのを見て、あとからパテ埋めしたり銅板で笠木を被してもらったりの対策を講じてきたのです。

 

 

↑【新築完成時】 赤く塗られた集成材が見えています

 

↑【新築完成時】 この段階では集成材の天端はそのままでアンカーのナットも見えていました

 

 

20年の時を経て来る時が来た訳ですが、朽ち方から見て、もし何か重量を支えているような箇所であれば、とっくに崩壊していたであろうと思われます。そうこうしているうちに、ほどなくシンケンのアフター担当スタッフさんから「今度、見にいきますね」との連絡がありました。

 

 

 

「アフターメンテナンス」の極意(その2)につづく

 

 

 

 

 

 

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