「夜型人間」の朝活
仕事に集中したり、能率が良い時間帯をさして「朝型」とか「夜型」などとよく言いますが、皆さんはいかがでしょうか?これは、生まれつきの体内時計によって決まると言われています。「朝型」の人は早寝・早起きで午前中から活動的であるのに対して「夜型」の人は遅寝・遅起きになりやすく、午後から夜にかけて活動的になります。振り返ってみれば、子供の頃から強制的に朝型生活にされていた感がありますが、天性の夜型の子には災難としか言いようがありません。
オフィスワーカーを対象としたある調査では、朝型傾向(強い朝型・朝型・やや朝型)が全体の45%、夜型傾向(強い夜型、夜型、やや夜型)が30%で、残りのどちらでもない「中間型」は25%と報告されています。「中間型」というのがあるのですね。
どちらかというと、社長は朝型の方が多いように感じますが、お役目上ゆっくり寝ていられないから朝早くから活動されているだけかもしれません。存じ上げる社長の多くは朝早く、夜遅く、「朝夜型」というか「モーレツ型」というような人たちです。実際のその人の体内時計に反してがんばっていることになります。
また、同じ人でも「朝型」か「夜型」かは、年齢を経るに従って変わるそうです。個人差はあるものの、青年期までは「朝型」→青年期は強い「夜型」→成人期以降は再び「朝型」に移行することが分かっています。私の場合、いまだに「夜型」のような気がしていましたが、試しにネットの診断テストをやってみたら、なんと「中間型」でした。
「中間型」は朝型と夜型のちょうど間で、昼型とも呼ばれています。「やや夜型」「やや朝型」をこちらに含めてしまうと全人口の7割ほどが当てはまります。意外と「朝型」「夜型」ともに少数派なのです。「中間型」の人は、昼にかけて能力が全開になっていくので、論理的な思考が必要な仕事はランチ前がいいそうです。
↑「朝型」「夜型」の割合(平均年齢36.7歳、8,155人のオフィスワーカーが対象)
最近自宅では、日が短くなる冬の朝に集中できそうな机を設置しました。といってもいつもの思いつきで、仮設です。その机も、倉庫でホコリを被っていた自作のもので、デッキでのバーベキューの際に食材置き場に使っていたものです。3本足仕様で、足の長さが自由になるようになっていますので、低めの窓と同じく低めのひとり掛けソファに無理やり合わせてみたのでした。
この場所は、屋根裏部屋の東側にある窓に向かっていますので、朝日を浴びて目覚めよくガンバる感じのポジションです。この窓からは毎年、冬至の頃になると枕元にまで朝日が差してきて、夜遅かった翌朝も強制的に起床させられるのです。そして、起きてすぐ横にあるこの「朝活デスク」でカリカリやるのです。
↑これが「朝活デスク」(デッキでのバーベキュー用食材置き台です)
↑どこに置いてもグラつかないように、このように3本足仕様になっています
↑朝寝をしていても、顔面にダイレクトの朝日が差してきます
↑朝活デスクの位置。屋根裏部屋の東側にあります
このような環境で毎朝起き抜けに朝日を浴びまくっていると、不思議に夜の眠気がものすごいのです。これは、睡眠外来などでお医者さんが言う3つのスイッチが入るからだそうです。
■スイッチ1:メラトニンの分泌の抑制
睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンの分泌が止まり、脳が覚醒して眠気が覚めていきます。
■スイッチ2:セロトニンの分泌の促進
メラトニンの代わりに分泌されるのがセロトニン。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、体温を上昇させたり交感神経を優位にしたりするなど、日中の意欲的な活動を促してくれます。
■スイッチ3:睡眠予約
人間の体は朝の光を目に入れてから約14~16時間後に、メラトニンの分泌がスタートするようにできています。つまり、朝日を浴びることで「睡眠予約」のスイッチが入り、夜の快眠を促すことにもつながるのです。
どうやら「朝起きてすぐに」と「目に光が当たる」というのとがポイントのようです。自宅では毎朝自動的にこの条件を満たしますので、約14~16時間後にフラフラになってくるのだと思われます。おかげで全然夜中はがんばれなくなってしまいましたが、睡眠中は超グッスリです。これが自然なのかもしれません。(メラトニンとセロトニンについては 『睡眠住宅』考 をご覧ください)
「日本寝室事情」あるある
住宅のリフォームを数多く手掛ける建築家の談によると、クライアント宅の寝室のほとんどは「物置き」になっているそうです。住まい手が何十年と寝起きした寝室は結果として物置き化していくことが実態のようです。
建築家は、その要因として多くの寝室に付属している押入れと、その容量不足を挙げています。「とりあえず、押入れの前に置いておいて今度整理して入れよう」という物が、なし崩し的に寝床の周りに集結してしまうのだそうです。「どうせ寝るだけなんだから、まあ、いいか」と、だんだん物置き状態に慣れてしまうのです。いつしか、寝室に物が多いというより、物置きに寝ているという佇まいになっていくのです。
そういう実態を解消しようと、マンションを含め新築住宅にはウォークインクローゼットが「定番」となってきました。「押入れ育ち」の人たちには大人気でしたが、ただでさえ狭い住宅をさらに狭くしてしまう結果となってしまいました。ウォークインクローゼットは収納量の割にスペースを占有してしまうからです。家の中に余分に廊下を増やしているわけですから、当然といえば当然です。
建築家は、もう一点大問題を指摘しています。寝室の「無窓化」です。置家具や収納ケース類が、唯一あった窓を徐々に塞いていくからです。そして、そのことが極度の「エアコン依存」を生み出し、体調管理をより難しくしていると言うのです。せまい寝室にエアコンを設定すると、かなりの確率で風が当たりすぎます。しかし、切れると不快なので、またつけてしまうのです。それぞれ個人差もありますが、たいていは何れも快適とは言いがたいのです。まさに悪循環。個人的にも新築前のお施主様宅で、そういう状況を多く拝見してきました。
そもそも寝室は、住宅の間取りの中で最も環境の悪い場所に設けられている場合がほとんどです。そんな悪条件の部屋に唯一ある窓まで塞がれて、開け閉めしなくなればどうなるか?春秋の気持ちのいいはずの季節ですら、除湿を兼ねてエアコン頼りになってしまう訳です。不眠やアレルギーが増えるのはあたりまえです。
建築家は、不思議な共通点にも言及しました。子供が成長して家を出てもなお、劣悪な寝室環境を改善することはないのだそうです。子供が出ていけば「手狭である」といった最大の原因は解消されるはずです。それにもかかわらず多くの家庭で「物置きの中で寝る」という行為は続けられるのだそうです。「習慣」とはおそろしいものです。
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本当に幸せな生活とは?
子供の頃「はじめ人間ギャートルズ」というアニメがありました。架空の原始時代に繰り広げられる、原始人たちの大らかかつ突飛な日常を描いたギャグ漫画です。子供心に「なんじゃこりゃ」という題材でしたが、なぜかその独特のユーモアや世界観で大人気を博しました。
舞台は原始時代ですが、現代と違い物質的には何もないその設定が、不思議なリアリティと魅力を放っていました。主題歌の作曲は「かまやつひろし」劇伴(映画やテレビドラマなどで流される音楽のこと)は無名時代の久石譲(藤澤守名義)が担当だったりして、今から思えば大人の漫画であったような気がします。
↑アニメ時代の「はじめ人間ギャートルズ」1974年から1975年にTBS系列で放送
原始の人間は日の出と共に活動を始め、日の入とともに活動を終える生活をしていました。夜は明かりがないし、夜行性の動物など危険が多いので、活動を控えるわけです。それが自然であったのです。「はじめ人間ギャートルズ」でもマンモスが強大な人間の天敵として描かれていました。このマンガはおそらく何十万年前の話ですが、医学的にはそのような「朝、朝日を浴びて、夜暗くなったら過剰な刺激を避けて早く寝る」というサイクルが、人間にとっていまだに健康の礎であることが説明されています。
人間は「進化」と「適応」の動物ですが、何十万年ぐらいではそれほど大きくは変われないようです。何十万年よりもっと長い時間をかけて地球の環境に適応した体のしくみは、良い「習慣」の積み重ねとも言え「最適化」そのものなのです。そう考えると、現代の住宅事情はやや自然の環境から遠ざかりすぎなのかもしれません。また、自然環境との不適合を強いる、悪しき「習慣」がもたらす不健康には注意が必要です。
自然が持つ要素は複雑すぎて、まだまだ解明されていない分野が多く存在します。未知のものを切り捨てることの危険性が、少しずつですが明らかになってきています。「寝室」として用途限定した個室空間が果たして健康的なのか?は、どうやら一考の余地がありそうです。