続・家づくりの玉手箱 2021.06.29

いつどこで過ごすかの『自由』 屋根裏編1

 

 

姉妹あい部屋期

 

一冊まるごと自宅ネタばかりの本(書籍 家づくりの玉手箱)では、屋根裏部屋は妻と娘たちの場所でした。鹿児島に引っ越したらびっくりするような部屋をプレゼントするという「公約」でしたから、いちばん面白そうな屋根裏部屋は女子たちに提供することにしていました。

 

屋根裏部屋には東西に窓が1つずつと、北側に傾斜している屋根にトップライトが2つ付いています。1階や2階から比べると窓が小さく少ないようですが、意外と明るい場所になっています。トップライトをガバッと開ければ、家じゅうの空気がスウっと入れ替わって気持ちがいいものです。夏の暑い時期でも家の中の気流が止まらなければ、体感的にはかなり涼しくなります。

 

鹿児島市には堂々の活火山、桜島がすぐそばにあります。爆発(噴火)があると風下の地域は灰だらけになります。噴煙が収まった後も、雨が降るまでしばらくは屋根や木の葉に残った細かな灰が風で舞う日が続きます。そういった時は窓を開けていると家じゅうザラザラになってしまいます。夏場の自宅周辺は桜島の風下になることが比較的多いので、夏の風通しは桜島次第といった暮らしですが、今年は窓を開けられる日が多いようです。

 

↑娘たち2人部屋(当時小6.小3)のころの図

 

↑同じように机を並べたデコラティブな部屋が女の子っぽいです

 

↑トップライトのある場所は、やはり力関係から姉の領域でした

 

 

妹の天下期

長女は新築後6年間屋根裏に住んで、鹿児島を巣立って行きました。
それまで魅力的なトップライト下をがまんしていた次女は、すかさず陣地を拡大しました。それまで2人でシェアしていたスペースを高校生になるのと同時に独り占めできるようになったのです。

 

しかし、意外にも家に帰ってきてから屋根裏にこもるようなことはありませんでした。それまでの習慣もあったせいかもしれませんが、シェアハウスのように家じゅうの好きなところで過ごすような生活になっていた感じがします。

 

屋根裏にはドアなどもありませんので、友達と長電話したりする時は脱衣室が「使用中」になっていたと思います。トイレとともに施錠できる個室は他になかったからでしょうが、脱衣室といいながらも椅子もあるし、BGMが鳴っていたり庭が見えたりしていて「電話室」としては悪くない環境であっただろうと思います。

 

↑姉がいなくなった後の妹の「天下」の図

 

↑ひとり占めの屋根裏部屋ではやりたい放題です

 

↑「電話室」になっていた脱衣室はこちら

 

 

おやじ第1期

 

その後、妹の天下は3年で終わり、また彼女も鹿児島を巣立って行きました。
待ち受けていたように、今度はおやじが屋根裏の模様替えに着手しました。そして、意外な居場所に気がつくことになります。というのも新築後9年もの間、娘たちの空間にそう長居することはなかったので、実際にそこで長く過ごすようになって気づくことが結構あったのです。

 

自宅についてはこれまで何度も図面で見ていたり、CADによるアニメーションで見ていたり、完成してからも勿論見て触れてきている訳ですが、ぜんぜんノーマークであったポジションがあったりするのです。プライベートな心持ちになって落ち着いて座ったり寝たりして、その場に身を置いてみると「おやっ」と感じる「居心地」があるものです。

 

そういう時には「これはないかもな」と思いつつ、試しに家具の配置を変えて無理やり置いてみたりします。自宅ですから、仮にやってみるのです。しかし、その仮設のはずのポジションでの居心地が気に入ってしまって常設化することは良くあります。住まい手が探り探りそのような場所を見つけながら生活する様は住まい手にとって発見に満ちた楽しいものであると同時に、設計者にとってもひとつの理想形かもしれません。

 

↑妹が去ってすぐさまオヤジが進攻した後の図

 

↑新築後苦節9年にして、ちゃんとした書斎を獲得しました

 

↑トップライト下は優雅な読書スペースになりました

 

 

おやじ第2期

 

何年か前にお客様の家具探しを手伝っている時に、大ぶりで全部革のひとりがけソファに出会ってしまいました。ヴィンテージにしては珍しくいい感じの座りごこちで、置く場所のことは考えずに衝動買いしてしまったのです。リペアしてもらってから自宅に送ってもらうまでの間に考えに考えましたが、いい置き場所は見つかりませんでした。

 

そうこうしているうちに、巨大な梱包に包まれたソファが自宅にやってきてしまいました。妻に「どうするんこれー」と言われながら、しばらくは2階のリビングに無理やり置いていました。「じゃまやわーこれ」という容赦ない「口撃」に耐えかねて、ふと思い立って屋根裏に上げてみたのでした。いつものように「まあ、これはないやろな」と思いつつ無理やり置いて座ってみたら、これがまたいい。また、見つけてしまったのです。

 

もともと置いていた机は、はじき出されてトップライトの下に置いてみました。夏暑いので「ここは無い無い」と思っていた場所ですが、夏以外の季節にはとても「やる気」がみなぎる感じがしてきました。こちらも「結果オーライ」ということで、当初困難と思われた模様替えが決着しました。

 

↑ゆったりでかいアンティークの革製椅子設置の図

 

↑大ぶりの革の椅子に身をあずけ、ベッドの端に足をのせると最高です

 

↑老眼になってくると、机は明るいトップライト下が具合がいいのです

 

 

「居場所は決めつけない方がいい」

 

 

決めてもいいけれど、住まい手が選択肢を多く持てる方がだんぜん楽しい。少なくとも住まい手が住みながらいろいろな場所を探れたり、好きなときに自由に居場所を変えられる方が、どうもいいようです。

 

 

 

社長の会社ではプラン提案のときに座る場所や寝る場所は決まっていますか? 後に住まい手が迷うほどたくさんの居場所をつくってありますか?

 

 

 

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