続・家づくりの玉手箱 2021.10.11

「気付いたら壊れてました」的なメンテナンス

 

 

知らないうちに

 

最近「あれっ」と思うことがありました。

 

毎日目にしているはずの玄関ポーチの目隠しになっているスリットがいつのまにか傷んでいたのです。見ているようで見えてなかっただけで、実際には少しずつ変化していたはずなのですが、気づいた瞬間には「あれっ。いつのまに」と感じてしまうものです。

 

実際には傷んできていても、それが目につかないようになっている「設計」は、ある意味でうまくいっていると言ってもいいと思います。また、それは造園・外構などのエクステリアの計画が家と一体的になされていればこそ、そうなるとも言えます。新しい家によく見かける「建物以外の要素は土間コンとアルミフェンス」といった「設計」であると、外部環境に面している部分はほぼ丸見えなので、消耗具合も常に人の目にさらされることになります。

 

傷みの出たところが目立って、早く見つけられるという面もありますが、日々そういった場所を目にしながら生活するのも精神衛生上どうかと思います。できれば目立たないでいてくれれば、住まい手としては心穏やかですし、特に外観上ウィークポイントとなる場所に必要以上に目立ってもらう必要はないものと考えます。20年ほどひとつの家に住んでいてそう思うのです。

 

 

↑ある日「異変」に気づいたのは玄関ポーチのこの場所でした。

 

↑こんな塗り残しなどなかったはずですが…

 

 

↑足元に目をやると、デッキにはついてるようですが(フカフカになって傷んでます)

 

↑塗装ラインまで持ち上げてみました

 

↑3cmほど天井に差し込んであったようです

 

↑持ち上がった分、足元が3cmほどあいてしまいました(敷いているのは30mmのJパネル)

 

なんとも玄関ポーチの端のスリット板が「だるま落とし状態」になっていました。 この場所のスリットは十数本ありますが、両端のみ一枚もので間のスリットは表側と裏側のツーピースに分かれていて10mmの中空ポリカーボネート板を挟み込んで固定してあります。そのツーピースのスリット板はポーチ天井の板とデッキ板それぞれに直接固定してありますが、両端のスリット板だけはポーチ天井の板に差し込んであったのです。そのスリット板の足元が腐っていって「だるま落とし」状態になって、ポーチ天井板への差し込み部分がだんだん下がってきていたのです。

 

 

そういえば、ある「兆候」が

 

その後、しばらくはなんか不思議な気がしていましたが、思い返してみれば「兆候」のようなことがありました。

 

 

薪棚については 『森のこびと』に出会えた土地選び をご覧ください

 

 

↑薪棚「大崩壊」の図

 

↑薪を拾って積みなおしましたが、ほどなく上のほうの薪が落ちてきて…

 

↑応急処置をして、冬を待つことに…

 

完成当時、この場所をつくってくれた大工さんは工事中の自宅でよく話をしてくれました。次の現場がどんどん控えていて忙しかったのに、先々のことをいろいろ気にしてくれていました。

 

「ポリカは透明を張るのお?傷みが目立ちはせんやろか?」「乳白にしとけばよかったんじゃないのお」と言われたのを思い出します。私が透明を希望してお願いしたのを、とても気にされていたようです。その後、大工さんは作業を進めてからスリットの間のツーピース板について「ここは、ダボを取ってビスをはずせばポリカが交換できるようにしといたからね。傷んだら乳白にすればよかと」と、丁寧にいざというときの交換方法について説明してくれました。

 

当時、こういった場所については図面がありませんでしたので、大工さんオリジナルのおさまりです。ここで「何を優先しているのか」がその仕様に現れてきます。

 

 

↑改めてよく見てみるとやっぱりもう片方も!でした。

 

↑多分とっくにだと思いますが、すっかりはずれておりました。

 

 

↑大工さんからは「ここのビスをはずせばポリカ交換できるからね」と教えてもらっていました

 

 

『20年を見越した』気遣い

 

たまたまこの場所が写っていた写真を見てみると、今年の2月頃には確かにこのもう片方の板はまだはずれてはいませんでした。

 

完成当時、大工さんは透明ポリカの美観が損なわれ交換したくなるタイミングが木材の損耗よりも、早く訪れると考えていたのでしょう。結果として現実はそうはなりませんでしたが、その大工さんは時間のないところでも格子を取り付ける際に、はずすことを考えながら仕事をされていたのです。ひととおりの作業を終えてから、施主である私に「はずしかた」を丁寧に教えてから現場を離れていかれました。

 

ちなみに、この大工さんは「社員」の大工さんではなく「外注」の大工さんでした。 外注の大工さんが図面もなく、また現場監督から特に指示されることもないのに、普通にこのようなお仕事をされているということは素晴らしいことです。しかし、現実にはこういう仕事のしかたが習慣になっている大工さんはあまり見られないようになっています。シンケンの職人集団が”オルスタズ”(オールスターズの変形)と呼ばれている所以でもあります。

 

造作の腕前はもちろんのことですが、そのことを抜きにしたとしても「手がけた現場から次の仕事を生み出す」という観点からも間違いなく”一流”です。それは、自らがつくったものが「その先どうなってゆくのか」という「想像力」を持ち、日々仕事をしてきた「証」でもあります。

 

 

社長の会社では、外部に木で造作をすることはありますか?そういった仕様を提供する場合、「その後どうなっていくのか」を考え「そのときにどうしたらいいのか」をすまい手に伝える姿勢を持った仲間と仕事をされていますか?

 

 

 

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