土地みたて 2022.06.13

造成地あるある(その3)高低差3題

 

造成地あるある(その2) からつづく

 

 

鹿児島市内は平坦な土地の少ないところで、桜島の外輪山※が錦江湾をぐるっと囲むような地形をしています。阿蘇のカルデラ(草千里)が海になったような感じといったら分かりやすいでしょうか。

 

そういった事情もあって、鹿児島市内の造成地は高低差が大きい場所が多くなります。坂道だらけの団地です。でも、どこにいくのにも車を利用する人が多い地域なので、意外と坂道が決定的なマイナスポイントになることは少ないようです。

 

しかしながら、傾斜地の造成団地にはかなりの確率で「桜島ビュー」を売りにしている場所が多くあります。鹿児島市内から見る桜島は錦江湾に浮かぶ、すそ野から全部見える美しい活火山です。鹿児島県人にとって「桜島ビュー」は、少々の坂道など気にならないぐらいのプラスポイントであります。

 

そういった中での土地探しでは、多くの「高低差団地」に挑戦してきました。「住まい教室」という家づくり勉強会でじっくり学ばれたお施主様たちの「将来安定した眺望を獲得する」「難所を買って大きく化けさせる」といった志向が、私を「高低差団地」へと向かわせるのでした。

 

今回の3例はいずれも新築されて、現在もお住まいになっているケースです。ここでは「土地みたて」当時の段階でのお話をします。

 

 

①道路と高さのそろった造成地にて

 

新たに造成された団地内でも道路と高さのそろった区画が、やはり人気です。新築の際に子供のいる家庭でも、やがては家族が全員車を運転するようになる訳ですから、駐車のしやすさは重要視されます。

 

しかし、そのような土地はどうしても坪単価は高めですし、他の要素でよくない点を抱えている場合もあります。やはり、建物が建った状態での居心地で選ばなくてはいけません。それが営業担当者の『使命』でした。

 

残された斜面を開発した造成団地。あるケースでは道路との高低差のない土地を検討していました。そこは3坪ほどの「おまけ」のようなのが付いている土地でした。

 

4つの隣接地はそれぞれ「同じ高さ」「+3メートル」「+3メートル」「-3メートル」といった状態で「-3メートル」の土地のみ今回の開発団地外のものでした。そこにはいい感じで木が生えていて、1階部分の目隠しになりそうでした。

 

しかし、わずかに残された「難所」である傾斜地の造成が進むご時世に、長い間このまま利用されないということは、なさそうです。この土地の下見当時は「この木があるのも所有者の相続までの数年ぐらいかな」と思って写真を撮っていました。

 

↑残された斜面を開発した造成団地(写真右側に山であったなごりが見えます)

 

↑3坪ほどの小さな四角のついた土地(利用のしかた次第では活かせるかもしれません)

 

↑隣接しているこの環境は「あと数年ぐらいかな」と思いきや。。。

 

↑すぐさま「鋼製階段」が取り付けられ、4区画の造成工事が始まってしまいました(汗)

 

↑造成計画から、だいたいの建物配置は予想できそうです。これはすぐにでも建ちそうです。

 

 

なんのことはない、この土地の新築工事を始める前に造成が始まり、あっという間に家が建ってしまいました。。。しかし、そのおかげで周囲の「不確定要素」は無くなり、万全のプラン提案ができました。

 

 

 

②道路よりずっと高くなっている造成地にて

 

道路からの高低差が大きくてもいいから「桜島ビュー」を確保したいというケースもありました。道路より大きく上がっているということは、それだけ視野を塞ぐ建物を回避しやすくなります。高層建築の少ない鹿児島市では、数メートルの違いでも見える景色にはかなりの好影響をもたらします。

 

いっぽうで、駐車の方法やアプローチで消費されるスペースなどの問題も受け入れることになります。堀車庫にすれば土地の有効活用にもなりますが、コストアップになる割には便利でなかったりします。また、高さの大きいアプローチはそれなりに面積が必要なので、堀車庫で稼いだスペースも帳消しになってしまいます。

 

そのような条件下でも、ここは得難い眺望が魅力の土地でした。堀車庫以外にも駐車スペースが2台分あるのも、日常ひんぱんに出入りされる奥様には安心材料でした。

 

↑こちらも残された急傾斜を開発した造成団地(やはり山のなごりと接しています)

 

↑地盤面が道路よりかなり上がっています(駐車スペースもアプローチも位置が決まってしまっています)

 

↑階段アプローチも「仕上げを残すのみ」というところまで出来ています

 

↑隣接の「山のなごり」に「あやしい通路」を発見

 

↑「あやしい通路」を登っていくと、地主さんの「残地」らしき土地が(成り行きで出来ちゃった形のようです)

 

 

造成団地の端っこは「山のなごり」に隣接していて、わずかな自然を共有してもらえることがあります。下見に行った際は、そのような端っこばかり見てまわっていました。

 

しかし、権利上の状態も確認しておかないと「将来そこがどうなりそうか」という予測はむずかしく、現状での判断は危険をともないます。そういうことをしていると法務局で使う経費がかさんでしまう事もしばしばでしたが、そういう事を社長からとやかく言われたことは一度もありませんでした。

 

 

 

③2面道路なのに入れない造成地にて

 

思わず「なんじゃここは?」といった土地もありました。

 

お施主様は大変勉強熱心な方で「住まい教室」や「建物見学会」にも毎週のように足を運んでくださっていました。「土地みたて」の奥義とも言える「難所を安ーく買って、大きく化けさせる」というテーマに心酔されたご様子で、数多くの「レア物件」を自ら発掘されては連絡をいただいたものでした。

 

結局はその中でも「最強」と言える物件で新築を行うことになりました。初見では正直「ここに家が建てられるのだろうか。。。」と驚愕した記憶がありますが、実際に素晴らしい住まいがここに建っています。

 

↑スイッチバック※方式道路の造成地(地山の勾配のゆるいルートに道路がつくられています)

 

※スイッチバック(英語: switchback)とは、険しい斜面を登坂・降坂するため、ある方向から概ね反対方向へと鋭角的に進行方向を転換するジグザグに敷かれた道路又は鉄道線路である。

 

↑高いほう(写真左側)の道路から3〜4メートル下に地盤面があります。低いほう(写真右側)の道路はというと。。。

 

↑低いほう(写真右側)の道路にまわってみると、こちらも5〜6メートル級の高低差が(しかも車庫もアプローチもありません)

 

↑2面の道路の何れからも入れなさそうな土地での地鎮祭風景(シュールです)

 

↑実際にはこのようなルートでおそるおそる降りて行きます(断崖絶壁で暮らすヤギみたいです)

 

 

「その場所で家が建ち、どのような環境になってどう暮らせるのか」という想像力を持って造成された土地は、ほとんど見ることがありません。かかわる多くの専門業者の分業形態とその経済原理から考えると、やむを得ないのかもしれません。

 

さらに「相続などの権利の移転」や「度重なる法律の改正」などの時の成り行きによってたまたま「出来てしまった」形状を持つ土地も多く存在します。

 

それゆえに「土地みたて」という技術が必要とされているのです。それは「その場所で家が建ち、どのような環境になってどう暮らせるのか」という想像力です。

 

 

社長の会社では何を重視して土地選びをされていますか? まさか、単にクロージングの「しやすさ」や「スピード」を最重視されてはいないですよね?

 

 

造成地あるある(その4)希望の広さに分筆2題 につづく

 

 


 

 

 

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